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【環境意識が高まらない訳?その2 - 18/02/26】

その1からの続き
主体のあり方について、西欧の庭園と日本の庭園でもその違いは明白です。
西欧の庭園は、王様がお城の高い窓から見下ろして楽しむため、左右対称の均整のとれた植栽にデザインされました。これに対して日本庭園は、六義園などに見られるように回遊式で鑑賞者である主体が庭園を歩き、庭園空間に馴染み込まれてゆきます。
見る主体が景色の外にあるか、中に含まれてしまうかの違いをみることができます。
2018.02.26 NOC.JPG
西欧と日本人の主体、客体の関係は、
言語表現でも見られます。
川端康成の雪国という小説の冒頭の有名な一節に「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」とありますが、これを英語的に文章化すると「私の乗った汽車が国境の長いトンネルを抜けた。そこは一面雪景色であった」となります。
日本語的には、主人公の視線をそのまま読者も感じて、窓の外の雪景色を想像します。完全に小説の世界に入り込んでいます。
これは、日本語の特質で文章に主語がなくても成り立つ仕組みがあるからできる芸当です。文章から受ける印象は、主語にこだわらないので縦横に移動でき自由です。
英語的には、主語がないと一歩も前に進めません。その汽車に乗っているのは誰なのかを重視します。読者の視点は汽車の外にあり、汽車がトンネルから出てきて、雪の景色の中を、煙を吐いて走る姿を想像します。

この原稿を書いている時期に、テレビを見ていてハッとしました。日本のテレビの報道番組やトーク番組などの背景です。
生活の雑多な物が棚に雑然と置かれています。または窓の障子から外の日本庭園が垣間見えています。
まるで見ている側の生活空間とひと続きのように装飾されています。
視聴者が同じ空間に馴染む工夫です。外国のニュース番組にはまずこのような背景を見ることはありません。スタジオと視聴者の立場の違いをはっきりとさせています。ここにも日本独特の主客一体化を見ることができます。
主体をどこに置くかでこれほど受け取る印象が変わるのです。

主体が遠近法的にみているか、トポロジー的に見ているかこの違いがエコロジー意識の違いに表れているように思えます。

西欧諸国はいち早くエコロジー意識を持ち、オーガニックビジネスを成長させました。
これに対して、先進国でありながらわが日本は、なかなか本格的な市場に育ってこないのはなぜかと考えてみると、日本人はエコロジー地球環境というものを遠近法的に見ることをしないからではないかと思われます。
人間も大自然の一部であり、対峙するという感覚を持ち合わせていません。
西欧では、自分の考え、視点をはっきりと持って、自然環境をどうすべきか判断して生活用品を躊躇なく購入する人が多くなり、エコロジー商品が巨大な市場に育ってゆきました。
一方、わが日本では、確固たる自分の視点はなく、他人の視点や世間様の価値観を見計らって物事の価値判断をする傾向が強く、買い物も売れているものを競争で買い、並んでいる人気のラーメン屋さんに好んで行きます。
「みんなで渡れば怖くない」という言葉が日本人の行動様式をよく表しています。
日本絵画スタイルと同じでトポロジー的な相対的価値観で生きています。
相対的な価値観は、人との違いを嫌い、目立つことを嫌い、平穏を望みます。
販売サイドも相対的で、市場の趨勢を見て品揃えしますから、これはいいと分かっていても、難しい説明の要るエコロジー商品を敬遠しがちで、定番として当たり前にお店に並べることはしません。
ネットショップでも探さないとエコロジー商品に出会うことはありません。

それでも「個の確立した意識の高い消費者」に支えられて、オーガニック市場はなんとか細々ながら右肩上がりの成長を続けています。

オーガニックという言葉の響き、イメージはかなり良いもののようで、最近色々な場面でオーガニックという表現を見掛けるようになりました。
「オーガニックマインド・心が軽くなる人生のサプリ」とかマンションの広告には「オーガニック&シンプルライフ」とあり、「オーガニックカラー」、
「オーガニックサウンド」、「オーガニックな香り」、「オーガニックテイスト」、「オーガニックタッチ」等々知的で最上級の形容詞になっています。

もっともっと生活感に馴染んで、彼も彼女もオーガニックを買っているという普及段階が来ると市場は急速に拡大します。

兆しは、あちこちに現れてきています。
重かった扉がやっと大きく開くことになるでしょう。

平成29年6月2日                 
日本オーガニックコットン流通機構 
顧問 宮嵜道男(文責)


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