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【白い袴を青く染めよう!  - 17/08/31】

NOCのオフィスは東京神田にあります。
オフィスの近くに紺屋町という地名があり
その昔、この辺りに藍染の工房が沢山あったようです。

江戸古典落語に「紺屋高尾」という有名な噺があります。
毎日仕事の藍染に勤しみ、手を青く染めた職人が一心不乱にお金を貯めて、遊郭吉原の当代一の憧れの花魁高尾太夫を買いにゆき、その思いにほだされた高尾太夫がついには嫁になるという、大名でなければ手を出してはいけない高尾太夫を一介の職人が、大金星を得たという江戸の人々が好んだ噺です。

 さて、ことわざに「紺屋の白袴」というのがあります。
医者の不養生や髪結いの乱れ髪と並んで、折角の本業の良さを活用しないとか、仕事を優先して自分のことには無頓着という意味です。

 先日、(株)パノコトレーディングがbioReプロジェクト近況報告会を開催しました。
インド、スイスから責任者が来日し、スカイプでタンザニアの担当者と繋げ、報告会は大いに
盛り上がりました。
そして参加者からも沢山の質問が寄せられました。

その中に、「インドやタンザニアの人たちもオーガニックコットンの服を着ているのですか?」という質問がありました。

現地で働く人々の姿の写真を見て、農家の人々が着ているシャツはオーガニックなのかどうか興味を持ったのでしょう。
その答えはNOです。
オーガニックコットンの原綿を生産する地域では、オーガニックコットン製品は売っていないということです。
きっと、野菜を作っている農家の人たちが、その野菜を食べているということからきっとコットンも自分の服として使っているのだろうと思ったのでしょう。
コットンは農家の人たちにとっては、「換金作物」と云ってあくまでも現金収入を得るための作物です。

 コットンは、綿繰り、紡績、製織、デザイン、縫製、販売という長い行程を経て消費者の
手に届きます。当然、消費者が沢山いる都会で販売され、価格は元の綿の200倍にも
なってきます。
何れにしても農村の人々の収入では買うことはできません。

質問者はコットンの畑や工場で働く人たちが、粗末なTシャツを着ていることへの矛盾を
感じたのでしょう。

 翻って、私たちオーガニックコットンをビジネスにしている立場で、どれだけオーガニック
コットンの製品を購入して着ているでしょうか?

 ある時、オーガニックコットンの製品の企画の会議に参加した時に、その場の人たちが
着ている「服」に着目したら、大手のファストファッションのTシャツやパンツを着ている人が多いのにハッとしました。
これじゃ本気で売ろうという感覚になれないんじゃないかと心配になりました。
私たちには、買える機会も買えるお金もあるのにです。
 
はて、そう云う自分が着ているものはどうかと見ると、下着はオーガニックコットン製ですが、シャツは家内がどこかで買ってきたもの、パンツはウール製でした。決して褒められるものではありませんでした。
 
 頭のてっぺんから足先まで、オーガニックコットンで揃えるというのは確かに、現実的ではありませんが、その日その日、少なくとも一つや二つのオーガニックコットン製の下着、靴下、
ハンカチ、シャツを身につけようではありませんか!
 
平成29年4月17日                        
宮嵜道男(文責)


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