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【オーガニックコットンのオプイド - 15/06/23】

Op-ed(Opposite the editorial page)
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アメリカの新聞、雑誌のジャーナル界では、社内の意見とは反対の外部の意見を署名付きで
掲載することがよくあります。
読者に多様な判断をゆだねるのが目的です。
それを特別にオプイド記事と呼びます。
 
Sourcing Journal Onlineは、普段オーガニックコットンを支持する立場ですが、この度、
アメリカ,ニューヨークに本部を置く1959年創業の世界的なアパレル企業Olah Inc.の
重役Robert P. Antoshak氏のオーガニックコットンに反対の見解を載せています。
この刺激的なタイトルを見て、何事かと思い、急いで抄訳してみました。

【オーガニックコットンがどのように、はしかに罹るのか?】

私は一部の人々の感覚に疑問を持っている。
アメリカでは最近、「はしか」について心配していることがある。
その心配とは、予防接種に本当に効果があるのか、又は害があるのではないかで、
一部の親たちは、予防接種に不安があって子供に受けさせないでいる。
これはとても困った風潮である。
予防注射に対するつまらない噂や怪しげな偽情報(害について証明されていない又は、すでに
副作用があることが間違いであって、取り下げられた古い医学研究発表)が、
まだ生き残っているというものだ。
インターネットやテレビが、予防注射の恐怖を植え付けている面がある。

この事は、地球温暖化を信じている人々の抵抗運動やGMO作物の不安を言い立てている輩と
同じだ。
「恐怖」、そんなものはもともと合理的なものではない。
多くの場合の懐疑論は往々にして慎重さから来るが、不安だからといってその事実から目を背けるのはかえって危険な事である。
「恐怖」は、往々にして科学音痴から始まり、心を閉ざし、当初持っていた考えよりも頑なに
なり最後は「神話」にしてしまう。
      ・     ・     ・     ・     ・
長い間、衣料品に使われるコットンの中で、オーガニックコットンが唯一、クリーンで
持続可能性があると聞かされてきた。
それは本当じゃない。
圧倒的多数の一般のコットンは、これまでも、これからも十分持続可能性がある。
オーガニックコットン信奉者の信念は固く、決して疑うことがない。
その信念を非難するつもりはないが、今一度、冷静にデータを見てほしい。
持続可能性の商品についての私のスタンスをはっきりさせる。
まず私は、産業が天然資源を守ることは、大事だと考えている。でもオーガニック商品がすべての解決策とは思っていない。
収穫の多い年で、世界のコットン収穫量全体の高々2%というのが、オーガニックコットンの
現実だ。
単位面積当たりの収穫量は少なく、手間が掛かり、農家にとっては、その他の作物を作った方が収入は多くなるはずだ。
どんなに美辞麗句で飾ってもオーガニックコットンは、世界の繊維の需要に対してあまりに
少なく、農業者のよい収入にもなっていないのが現状だ。

オーガニック関係者に次の事を聞いてみたいものだ。
「世界の需要に応えられないのに、本当に持続可能性を主張できるのか? 
そしてエコロジーとエコノミ―(経済性)のバランスから考えて整合性はあると云えるのか?」
一般のコットンは、品種改良されている。その為、収穫率は高く、品質も安定している。
水の使用が少なくて済む品種に改良されているから、灌漑の水の使用量は確実に減っている。
これが事実である。
私に言わせれば、オーガニックこそ、卑しく不誠実な方法で何とか生産を続けている有様だ。
オーガニック信奉者はGMO(遺伝子組みかえ)という言葉を味噌くそに使っている。
多くの小売業者はお客がいいと云えば、無批判に店頭にオーガニックコットン製品を
並べてしまう。それはそれとして、特に非難しようとは思わない。

今週のニューヨークマガジンにこの問題の関連記事があった。
「THE CUT」というブログでASS Fashionの責任者のTimo Rissanen氏がこの問題点に触れている。
「オーガニックの市場が、いつまで経ってもこの程度なら、今の市場規模で既に十分だということじゃないか?」
このブログの内容は、面白い。小売市場ではオーガニックコットン製品はいずれ一般商品に
呑み込まれて消えてゆく運命にあるという。それが証拠に、既に消費者はオーガニックコットン
の混入した衣料品を沢山持っている。
オーガニックコットンへの興味は10年〜12年前が頂点で、その後は合成繊維製品が伸びて
いるのに対して、年々減少してきているのが事実だ。いつ消えてなくなるのか?
アパレル企業が、コットンの環境保全に関しての考えの多様性を議論している間に、
オーガニックコットンの影は薄くなり、逆に合成繊維製品は市場を伸ばし、議論は霧に包まれ、
やがて消えて行く。消費者は、オーガニックコットン入りの衣料品を少し持ってはいるものの、
結局、合成繊維製品の売り上げ増になってゆく。

私が常々不愉快になるのは、写真付きのイーメールに「私たち二人は、オーガニックライフを
始めたよ!これがオーガニックコットンのペアのTシャツだよ。見てね!」という類のものだ。
よく考えて欲しい。オーガニックですべてOKとはならないことを。
「世界はオーガニックコットンのTシャツなんて欲しいって思ってない。この先20年経っても同じだ。」
オーガニックとGMOの議論が果てしなく続いている。
それでもGMO市場はお構いなしに拡大してゆくに決まっている。
GMOは更に研究が進み、効果も向上してゆくので、アメリカでも中国でもインドでも
パキスタンでもいずれ、GMOコットンは90%になる。

それでも、いくつかの調査研究では、「オーガニックがどう考えてみてもより良い方法だ」と
云っているかもしれないが、科学的にエコロジカルな面でオーガニックコットンの方が、
一般のコットンより優れている理由や効果がはっきりしないところが問題である。

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<コメント>
昨年12月に、アメリカ・カリフォルニアで「はしか」の集団感染が起きて、社会不安に
陥りました。
一方、ワクチン注射により自閉症を発症するという不安があり、予防注射を拒否する母親が
います。この説は、古くイギリスの医者の見解から始まりましたが、今でも根強く不安として
残っています。
この投稿者のロバートさんは、一般のコットン農業で使っている農薬やGMO種を非難しているオーガニックコットンの主張は、根も葉もない「はしかワクチン接種拒否者」と同じだと
断じている訳です。なんと人騒がせなこの題名の意図がここにありました。
このロバートさんの苛立ちから、読み取れることは二つあります。
一つはオーガニックコットンという存在が量的には極小でも、無視できないほど消費者の支持を得てきているということ。
もう一つは、オーガニックコットンの出現で、コットン農業全体の農薬の使用量が減少してきて時代は農薬を減らす方向に進んでいるということです。
実際、オーガニックコットンまで徹底できなくても、エコを謳えるコットン、
例えばBCI(ベター・コットン・イニシアティブ)の様な綿製品が多く市場に出て来て、存在感をアピールしている現実があるということです。
ロバートさんのような保守的な経営者にとっては、このような業界の動きは迷惑と感じているのでしょう。
ロバートさんの会社のように世界的な規模でアパレルを扱う会社は従来、商品力と
コストパフォーマンスだけ考えていれば業績は伸びてきましたが、今やブランドイメージとしての社会貢献CSRの取り組みなどの必要性が出てきて、周りを見ると同業他社が、うまくこなしていて、出遅れたと感じた時、このようなオーガニックコットンそのものの存在を憎む立場に陥ります。
 オーガニックコットンが少量だから意味がない、価値がないという考え方は、余りに稚拙で、
かつての大量販売、大量消費のグローバル資本主義経済の感覚をそのまま持って経営していることが判ります。
それにしても、このような見解があることを知っておくことは、オーガニックコットンを扱う者には力になるでしょう。勉強になりました。

平成27年4月30日
日本オーガニックコットン流通機構
宮嵜道男

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